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中学生のとき、お小遣いを貯めてはじめて買ったLPというのが、この The Modern Jazz Quartet (MJQ) の数枚。"Softly as in a Morning Sunrise" が入ったものではなかったかもしれないが、東芝EMI・赤盤と呼ばれる美しいレコードがあり、陽に翳すと透明の深紅の光が部屋中に広がり、まるで学校帰りの午後に「朝日」が再来したようだったと記憶している。Jazzにフーガ形式を取り入れたかれらMJQの音楽に、深くインスパイアしたはじめての体験。 その後数年が経ち、ひと並みに恋をしはじめる年ごろになると、この曲の「さわやか」さと、Oscar Hammerstein Jr.の歌詞の間に大きな落差があることに気づく。邦題をつけた担当者は、他にことばが見当たらないまま「朝日のようにさわやかに」にしたのだろうが、おだやかな曲想の背後に、激しい太陽の活動のようなパッションが潜んでいる。爆発とそのあとの長い倦怠。黒点の増幅。あるいは地球という巨大な星が自転することで生まれる母星太陽の登場シーン。それらすべてが、人間同士の乱れた愛憎の放射に繋がっていく。決してさわやかな詩ではない。Softly =静かに、やさしく、生まれたばかりで美しすぎた愛のすべてを、この手から奪い取られていく。原曲は20年代の古風なミュージカル「新しい月」のために書かれたタンゴ仕立ての曲だが、ジャズ・プレーヤーたちが競ってカヴァーしはじめた。 自分の恋愛体験と並行して、さまざまなアーティスツのカヴァーを聴くことで、そのときの相手女性とのそれぞれまったくちがう体験が隠喩されていく。その都度 Hammerstein Jr. の歌詞の新しい意味に心が同調する。なんというさわやかな愛だ。なんという静かな鬱陶しさ、なんという今朝の破廉恥な朝日だ。幾重の輪を冠ったその恒星の輪郭は、死の迷宮への案内係のようだ。 昨夜の愛の舞台は、かの女のアパートであったり、ラヴ・ホテルであったり、ときには芝生の上だったりするのだが、朝日が昇るころには決まってひとりで、その紫外線の多い光を見つめている。 以下、意訳というより、体験的ショート・ストーリー(赤文字)も含めた金魚訳を辿ってみてください。 Softly, as in a Morning Sunrise そっと昇りはじめた 朝のひかりは 愛のひかり そこはかとなく 奪いはじめる 妖精は 生まれたばかりのきょう一日を象徴しながら その愛のなかに忍び込み めくるめく燃え上がる めくるめく燃え上がった核融合の炎は 生まれたばかりの愛を隠喩し 熱い口づけは すべての誓いを裏切り 燃えつくす Hiromi Uehara 震えながら 愛をかわす 見えないちからが ふたりをとめどない快楽の天上楽園へ 引き揚げる 融けあい 奪いあい ふたりはもう一度 大きな融合の朝日を観る Stan Getz ショート金魚「朝日のように」 たった数時間前まで、まったく知らなかったきみがこんなに近くにいる。頭から足先まで、これ以上は近づけないというほどきみに近づき、全身の触覚できみを感じる。たった今、十万光年離れた島宇宙のかなたから、亜光速で飛んできたふたつの魂が、ここで合体している。 きみの唇の細胞のひとつひとつが亜光速で入れ替わり、組み立てなおされていようなどとどうして信じられるものか。その斬新で異常な観念にとり憑かれたふたつの肉体は、さらに深くひとつになろうと試みる。エクスタシーの瞬間が近づいても、ぼくが触れているのはきみの魂であり、決してきみの肉体ではないことを思い知る。 「ぼくは彦星、きみは織姫?」少しだけちがうのはふたりがもう二度とあえないだろうこと。きみは明日パリに発つ。枕元のスーツケースが、ふたりを見つめている。そしてぼくもあと一週間で西海岸に発つ。一度きりの亜光速の出会い。時空間はさらに歪み、ふたりは叫びつつ、あがきつつ、ふたつの彗星は亜光速で衝突の瞬間を迎える。その魂の中核に直接触れた瞬間、ふたりは核融合爆発するんじゃないか。その激突を避けるつもりはまったくなかったのに、ほんの一瞬、おたがいが小さく身をひるがえす素振り。次の瞬間、正面にいたはずの織姫の姿はフッと消えていて、あわててうしろを振り返り、きみを逃すまいとする。そこにはもう亜光速で離れていくきみの、織姫星の、小さな背中しか見えない。そしてその背中すら猛烈なスピードでぼくから遠ざかっていく。ぼくの乗った宇宙船も、きみとは逆向きに亜光速で離れていく。絶叫の余韻だけが暗黒の宇宙に残る。あれだけ近づき、ほとんどひとつになっていたぼくたちの精神の核融合は、いまはもうそのかけらすらも見当たらない。 明けた七夕の朝、きみはパリへと旅立つ。ぼくはスーツケースを引きずり、きみを空港まで見送ったあと、朝日の当るデッキでひとりコーヒーを含む。お互いに日本を離れて、それぞれが地球の三分の反対側に住むという感傷が、さきほど別れた瞬間から新しい恋に変わったことを知る。ふたりとも新しいアドレスなどもたない。今朝も朝日は、さわやかでも静かでもなく、残酷に強烈に、紫外線を降りそそぐ。そこにある受話器を取って「西海岸行きのティケットを、パリ行きに変更してください」と叫びたい衝動に駆られる。それでも昨夜、溺れながら島宇宙のかなたに去った織姫星のパリでの幸運を念じているぼくがいる。 次の刹那 わけのわからぬままに 地獄へとつき堕され 深く溺れて 物語は終わる 静かに 黄昏のひかりが ゆっくりと消えつづけ 闇が訪れる 幸せの愛のひかりは すべてを奪って 去る Helen Merill NYCの「Jazz小屋」は、いまでは数軒を残して壊滅状態。生き残っている老舗の Village Vangard でも、全盛期には1amからのセッションがあった。4amからのジャム・セッションなどというのも覘いたことがある。村上春樹も何度もくり返しているが、Jazzはどう転んでも「夜の音楽」である。夜明けまでの数時間の落差が、朝日を唄ったこの曲の表現を歪めているのかもしれない。 いずれにしろジャズメンにとって、長時間労働のあとの「朝」は憧れ。ジャズを愛するぼくたち夜型人間にも、濃密な夜中のジャムを重ねた身に、さわやかであるべき朝は、同時にいつも過酷な音楽との別離を意味しているのかもしれない。 Softly, as in a Morning Sunrise (Oscar Hammerstein II/Sigmund Romberg) Softly as in a morning sunrise The light of love comes stealing Into a newborn day Flaming with all the glow of sunrise A burning kiss is sealing A vow that all betray For the passions that thrill love And take you high to heaven Are the passions that kill love And let it fall to hell So ends the story Softly as in a morning sunrise The light that gave you glory Will take it all away Eric Dolphy Softly as in a morning sunrise The light of love comes stealing Into a newborn day Flaming with all the glow of sunrise A burning kiss is sealing A vow that all betray For the passions that thrill love And take you high to heaven Are the passions that kill love And let it fall to hell So ends the story Softly as in a morning sunrise The light that gave you glory Will take it all away Softly as it fades away Softly as it fades away Softly as it fades away Softly as it fades away
by nyckingyo2
| 2014-07-07 11:11
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