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日本にお住まいの方は、トランプが大統領になってもう1年が過ぎたのだから、大方のアメリカ人はかれのいわくありげな言動から生じる「トランプ・アレジー」など脱したでしょう、などとおっしゃいますが、とんでもない。痛み/かゆみ/吐き気の症状を選挙直後よりもさらに激しく訴えているひとが大多数です。少なくとも私のまわり(私を含めて)には、かれのいんちき司政に憎悪と激しい反抗がとても多く見られます。かれの悪行の数々が、来たる20年の大統領選に必ずいい影響をあたえると確信しています。それにしてもあと3年もか!
このインタヴューの引用は、17年4月にアップした、春樹『騎士団長殺し』と絡めた"トランプ評論”のあとに貼ったのですが、全体が膨大な長文となってしまったので、いままで『みみずく』のこの部分は削除していました。2017の年の瀬を期に、もう一度アップしなおすことにいたします。 ● 村上春樹に川上未映子がインタヴューした『みみずくは黄昏に飛びたつ』から「騎士団長殺し」のテーマ抜粋。 川上未映子の質問を書き出しつつ、トランプに関する村上春樹の意見を抜粋します。現代日本の極端な政治腐敗にも、深く関わっている問題だと思います。 ● 村上:「結局、ヒラリー・クリントンって、家の一階部分に通用することだけを言って、負けて、トランプは人々の地下室に訴えることだけを言いまくって、それで勝利を収めたわけ」 ● 村上が「騎士団長殺し」を執筆しはじめたときに、トランプ大統領はなかったわけですが、彼なりに(その種類の)「悪しき物語」の大きな予感を感じていたのではないかと思います。 ● 下右のイラストは河上未映子がインタヴュー中に村上に提示したもの。 ――川上:村上さんは小説を書くことを説明するときに、こんな風に一軒の家に喩えることがありますね。一階はみんなのいる団らんの場所で、楽しくて社会的で、共通の言葉でしゃべっている。二階に上がると自分の本とかがあって、ちょっとプライベートな部屋がある。 ◆ 村上:うん、二階はプライベートなスペースね。 ――川上:で、この家には地下一階にも、なんか暗い部屋があるんだけど、まぁ、ここぐらいならばわりに誰でも降りていけると。で、いわゆる日本の私小説が扱っているのは、おそらくこのあたり、地下一階で起きていることなんだと。いわゆる近代的自我みたいなものも地下一階の話。でも、さらに通路が下に続いていて、地下二階があるんじゃないかという。そこが多分、いつも村上さんが小説の中で行こうとしている、行きたい場所だと思うんですね。(中略)地下二階に降りていくことは、今回の『騎士団長殺し』で言えば<顔なが>に導かれて地下の世界に入っていく体験と響きあっているようにも思うんですけど、地下二階に行く途中で、必ず地下一階にあるものを見ることになります。そこには例えば親とか兄弟とか、あるいは別の人間から受けた仕打ち、いわゆるトラウマみたいなものもあるわけですね。 ◆ 村上:うん、たぶんそうでしょうね。(中略) ――川上:例えば宗教の教義というのは物語の最もたるもので、あなた方にとってその物語がすごく大事ですよ、真理ですよということをたくさんの人に思わせることによって、物語が実際的な動きをもってくる。村上さんの作る物語がある。あるいは時代が生むさまざまな物語がある。人々の日常はこの「無意識」の奪い合いで、でもみんなそれでいいと思っている。自分たちの生み出す物語は何かしら善的なものを生み出すと思っている。誰もそれを戦いとは思っていないかもしれないけれども、とにかくわたしにとっては、どちらにも転びうる、解釈されうる、非常に危険なものを扱っているという感覚があります。オウム真理教だって物語があったわけですよね。もっというと「物語なんて、小説なんて、そんなの嘘だしくだらないから読まないよ」と言いながら自己啓発本を読んでいる人たちも、自己啓発という物語を読んでいるわけです。 ◆ 村上:トランプ大統領がそうですよね。結局、ヒラリー・クリントンって、家の一階部分に通用することだけを言って、負けて、トランプは人々の地下室に訴えることだけを言いまくって、それで勝利を収めたわけ。 ――川上:なるほど。 ◆ 村上:何ていうかな、デマゴークとまでは言わないにせよ、<古代の祭司>みたいな感じで、トランプは人々の無意識を煽り立てるコツを心得ているんだと思う。そしてそこではツイッターみたいな、パーソン・トウー・パーソンのデバイスが強力な武器になっている。そういう意味では彼はその論理や語彙はかなり「反知性的」だけれど、そのぶん人々が地下に抱えている部分をとても戦略的に巧みに掬っている。 論理的な世界、家の喩えでいうと一階部分の世界がそれなりの力を発揮しているあいだは抑え込まれているけれど、一階の論理が力を失ってくると、地下の部分が地上に噴き上げてくる。もちろんそのすべてが「悪しき物語」であるとは言えないけれど、「善き物語」「重層的な物語」よりは「悪しき物語」「単純な物語」の方が、人々の本音により強く訴えかけることは間違いないと思います。麻原彰晃の提供した物語も、結果的には間違いなく「悪しき物語」であったし、トランプの語っている物語もかなり歪んだ、どちらかといえば「悪しき物語」を引き出している要素をはらんでいるのではないかと僕は感じている。 ――川上:では、その物語を作っている当の本人、まあ、本当に彼が作っているかどうかも定かではないんだけれども、何らかの磁場の中心にいる麻原なりヒトラーなり、あるいはトランプは、自分たちが作り出している物語が悪しきものだという認識はあると思いますか。 ◆ 村上:それはわからない。トランプに関しては、僕はまだよくわからないです。しかしヒトラーにしてもスターリンにしても、自分が「悪しき物語」を作っているという意識は本人にはなかったんじゃないかな、彼らにとってはそれは「善き物語」であったんじゃないのかな。自分がこしらえた大きな物語に自分が呑み込まれていくことによって、その同化性からゆがみが生じてきたのかもしれない。それはもう歴史が判断するしかないことだけど。 ――川上:興味深いのは、やはり彼一人では物語が作れなくて、物語というのはいろんな人がいろんな物語を持ち寄って、一つの物語になっていくことでもある…… ◆ 村上:うん、それは集合的なものだからね。 ――川上:それを例えば河合隼雄先生は『影の現象学』の中で集合的無意識とおっしゃっている。ナチスドイツの所業は、そうした集団に生じた影を外部に肩代わりさせた結果であると言っておられて、その話を思い出します。 ◆ 村上:日本の戦後もそうだけど、多くのドイツ人たちも戦争が終わった時点で、自分たちも被害者の側にまわってしまうことになります。自分たちもヒトラーに騙されて、心の影を奪われ、そのおかげでひどい目に遭わされたんだという、おおむねそういう被害者感覚だけが残ることになります。日本の場合もそれと同じようなことが起こっている。日本人は自分たちだって戦争の被害者だという意識が強いから、自分たちが加害者であるという認識がどうしても後回しになってしまう。そして細部の事実がどうこうというところに逃げ込んでしまう。そういうのも「悪しき物語」の一つの、何というのかな、後遺症じゃないかと僕は思います。結局、自分たちも騙されたんだというところで話が終っちゃうところがある。天皇も悪くない、国民も悪くない、悪いのは軍部だ、みたいなところで、それが集合的無意識の怖いところです。 (『みみずくは黄昏に飛びたつ』新潮社・p-92〜97) ● どうぞ「騎士団長殺し」読後に『みみずくは黄昏に飛びたつ』も読んでみてください。深い考察が畳み込まれています。 書き出し:NY金魚
by nyckingyo2
| 2017-12-28 14:42
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