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今回はまた『霊魂』などと叫ばないで、現世優先的に書く。 朝方の夢枕に、生前お世話になった故ドナルド・キーン先生が立たれて、例によって「戦後日本文学者の最高峰は、安部公房」であり、かれの『死に急ぐ鯨たち』を読むようにという言葉とともに、彼方にある大扉のそのまた向こうに消えられた。 コロナ・エラに突入してほぼ1年、他者とのコミュニケーション感覚が希薄になり、安部公房の小説における現実希薄感覚を激しく繋げようとしている。夢のなかでキーン先生と公房氏とのあいだで、霊界ZOOMで語ったことばを、そのまま現世に持ち込むのはむずかしいが、本とともに手もとに残っているこれら断片的な安部公房の言葉を媒体に、現代社会を語る試みにしたい。 安部公房『死に急ぐ鯨たち』より ◆人間の作り出す空間ー巨大なる空間というのは一体何であるのか。その空間に時間というものを付け加えて考えると、人間の歴史とは、結局のところさまざまな不安定要素に対して、日常を拡大しつづける努力であった、といってよいのだ。 しかるに核兵器というとてつもないものを作り出してしまった世界にとって、日常はかなりことなった容貌を持ってわれわれの前に立ち現れているのである。 もし想像力の助けを借りないならば、この現実は「盲人に連れられて歩く盲人の群れ」を描いたブリューゲルの絵のように、楽観的に見える。しかし誰かおびえた一人が、駆け出すとしたらどうなるか。たちまち全員が反応を起こして、パニックをもたらすだろう。 − 安部公房『死に急ぐ鯨たち』より 今週、全人類の悲願を込めた『核兵器禁止条約』が発効されたのに、核保有国はいわずもがな、世界で唯一の被爆国=日本政府の役人たちは、条約のことを語ろうともしない。ヒロシマ・ナガサキ・フクシマの犠牲者に尻を向けたまま昼寝をしている。ほとんど実態のない『核の傘』を最大解釈して、テレビだけを見ることができる国民という盲人団体を先導している。 ◆鯨の集団自殺はなぞめいている。高い知能を持っているはずの鯨の群れが、突然狂ったように岸をめがけて泳ぎ出し、浅瀬に乗り上げて座礁してしまうのだ。 もともと肺で呼吸する地上の動物だったから、何かのきっかけで先祖がえりの想像力で、水による窒息死に恐怖心を感じて、岸に殺到するのかもしれない。 人間だって、鯨のような死に方をしないという保証は、どこにもない。 − 安部公房『死に急ぐ鯨たち』より ◆金魚独白:この小冊子『死に急ぐ鯨たち』より以前、1959年に発行された公房最初のSci-Fi小説『第四間氷期』は、まだ学生だった僕たちを興奮させた。それまで読み込んでいた50年代アメリカ発の名作SF群が急に軽く古くさく、感じられた。 公房は、気候変動で陸地がなくなり、すべて海に埋没するという陸生生物の危機を感じながら、実験的にエラ呼吸しながら海底牧場を遊歩する水棲人の少年=『エラ人間』を登場させる。かつての鯨が陸生哺乳類から、海に帰還したように。 ◆未来は、日常的連続感に、有罪の宣告をする。この問題は、今日のような転形期にあっては、とくに重要なテーマだと思い、ぼくは現在の中に闖入してきた未来の姿を、裁くものとしてとらえてみることにした。日常の連続感は、未来を見た瞬間に、死ななければならないのである。未来を了解するためには、現実に生きるだけでは不充分なのだ。日常性というこのもっとも平凡な秩序にこそ、もっとも大きな罪があることを、はっきり自覚しなければならないのである。 − 安部公房『第四間氷期』あとがき 時代にとって怖いのは、異常が正当化されて正常が異端視されることである。そういう状況の中では、大多数の民衆には、ひたすら強大なボスを待ちうける気分が充満する。 核戦争は肉体の破滅であるけれど、 その前には強い独裁者が必ず現れて、彼の指揮によって誘惑的な精神の御破産を唱和する衝動が、大多数の民衆の心に用意されるのである。 −安部公房『死に急ぐ鯨たち』より ◆金魚独白:安部公房はもちろん村上春樹よりもまえに、1984年よりもさらにまえに、オーウェルが預言した『1984年』の世界を、小説や随筆のなかでさまざまに暗示しています。 ◆ビッグブラザーをトランプに差し替えた画像は、2016年の大統領選で彼が当選したときに創りました。 思えば移民の僕たちにとっては、薄氷のながい道のりを歩くような危うい4年間でした。いまはただアメリカ国民が、トランプを排除してくれたことを、こころから感謝しています。 そしていつ何時、オーウェルの預言が現実となる日が来ぬように、公房の言葉たちを更に噛みしめ、反芻を繰り返しています。 ◆金魚独白:ビッグブラザーの顔を、現代の政治家のだれに差し替えてもそれなりの安定感(?)と恐怖感が滲み出ています。鯨たちのあとにつづいての集団自殺=人類滅亡だけは避けたいと思いながら、トランプの2024年選挙を睨んだ「前大統領オフィス開設」のニュースを、さらに横目で睨んでいます。
by nyckingyo2
| 2021-01-26 00:47
| 悪魔の国からオニの国のあなたへ
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